「鳴かず飛ばず」という日本語がありますが、日本ではどちらかというと悪い意味で使われている言葉ですよね。
しかし、語源や由来となった中国の故事によると、決して悪い意味の言葉ではないことがわかるのです。
今回は「鳴かず飛ばず」という言葉の本来の意味や、語源や由来を故事と一緒に解説していきます。
鳴かず飛ばずの意味
それではさっそく「鳴かず飛ばず」という言葉の意味について解説します。
「鳴かず飛ばず」という言葉を辞書やインターネットで調べてみると、以下の意味を持つ言葉だということがわかります。
・何の活躍もしないでいるさま
おそらくほとんどの人は期待をしていた人が全く活躍せずに、期待はずれだった時に「鳴かず飛ばず」という言葉を使いますよね。
そのため、「鳴かず飛ばず=うだつがああがらない状態」という意味で捉える人が非常に多いのです。
鳴かず飛ばずの本来の意味
続いて「鳴かず飛ばず」の本来の意味について解説していきます。
「鳴かず飛ばず」の本来の意味はもっとポジティブなものとなっています。
・将来の活躍に備えて行いを控えて、機会を伺っている様子
このように、今は大人くしていても、いずれは大きく変貌を遂げて進化することを予感させる言葉なんですね。
そのため、最初は活躍しなかったとしても、その後変貌して活躍をしたならば、それは本当の意味での「鳴かず飛ばず」ということなのです。
鳴かず飛ばずの語源・由来
続いて「鳴かず飛ばず」という言葉の語源や由来について解説していきます。
「鳴かず飛ばず」については古代中国の故事が語源・由来となっている言葉です。
鳴かず飛ばずの元となった故事
中国が春秋時代だったころ、荘王が楚の君主として即位した後、3年間は全く政治に関わらないどころか、毎日のように遊んで暮らしていました。
そして、自分のことを諫(いさ)めようとする者は死刑にするというお触れまで出されていたのです。
しかし、それでも王のことを考えて、荘王を諫める伍挙(ごきょ)という家臣が現れます。
伍挙は荘王に対して以下の謎かけを行いました。
「丘の上に三年間鳴くことも飛ぶこともしない鳥がいました。この鳥はどのような鳥だと思いますか?」
この謎かけに対して荘王は
「三年も飛ばない鳥ならば、いざ飛び上がれば天を突くように高く飛び、三年も鳴かない鳥ならば、鳴いた途端に人を驚かせるだろう」
と答えたのです。
そして、相変わらず遊び呆ける生活を続けていたところ、次に蘇従(そしょう)という臣下が現れて荘王を諫めました。
荘王が「私を諫める者は死刑にすると言ったはず」と蘇従を咎めると、蘇従は「王が私の意見を聞き入れてくれるのなら、死刑になろうと構いません」と答えました。
その後、荘王は伍挙と蘇従を忠臣として政務につかせ、荘王自身も見違えるような変貌を遂げて政治に励むようになったのです。
国民もこれを大いに喜び、楚は大国へと発展を遂げていくのでした。
敢えて三年間何もしなかった
つまり、荘王は自堕落な王だったわけではなく、意図的に自堕落な王を演じていたわけですね。
そこで、本当に国を思いやって、自分を諫める優秀な家臣が出てくる機会を伺っていたのです。
そして、実際に自分を諫める優秀な家臣が現れたため、重要な仕事を任せ、自分もここぞとばかりに政治に参加するようになったのです。
鳴かず飛ばずとは、このように機会を伺って、後に大きな変貌を遂げる可能性を秘めている人に対して使われる言葉だったんですね。
以上が鳴かず飛ばずという言葉の本来の意味、語源、由来についてでした。
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まとめ
鳴かず飛ばずは「何の活躍もしないでいるさま」という意味で使われていることが多い。
しかし、本来の意味は「将来の活躍に備えて行いを控えて、機会を伺っている様子」である。
中国の故事成語が語源・由来となっていて、春秋時代に楚の荘王があえて三年間何もしない生活を送り、機会を伺っていたことが語源・由来となっている。
あえて何もしないことで優秀な臣下を見つけ、やがて変貌を遂げて楚をいい方向へ導いたことから、鳴かず飛ばずは「後に大きな変貌を遂げる可能性を秘めている人」に対して使われる言葉である。