今回は「土左衛門という言葉の語源」ということで、日本語にまつわる雑学を紹介します。
日本では古くから水死体のことを「土左衛門」と呼んでいますが、なぜこのように呼ばれているかをご存じでしょうか。
土左衛門の語源は諸説ありますが、その中でも有力な説の一つとして知られているのが「実在した力士の名前」という説です。
俗説とは言われていますが、他にも数多く存在する「土左衛門」という言葉の語源を紹介していきますね。
土左衛門という言葉の語源
水死体が土左衛門と呼ばれるようになった由来は、水死体の見た目にあると考えられています。
少し気の毒なお話になりますが、溺れて亡くなってしまった方の水死体は一旦水底に沈んでいきます。
そして、水の中で腐敗が進んでいくとガスが発生することから、水の上に浮かび上がってくるんですね。
また、身体は水を吸って膨らんでぶよぶよになってしまい、肌の色も白く変色してしまうのです。
土左衛門は実在した力士の名前
それでは、なぜガスによって膨み、白くなった水死体を「土左衛門」と呼ぶようになったのでしょうか。
その語源は江戸時代に実在した「成瀬川土左衛門」という力士にあると考えられています。
山東京伝の著書である「近世奇跡考」の一巻には、水死体が膨れ上がった姿が土左衛門のようだとする記載があります。
そのため、江戸時代の頃から水死体のことを「土左衛門」と呼ぶようになったとされているんですね。
「土左衛門」の語源となった「成瀬川土左衛門」は、他の力士と比べると身体のサイズが一回りも二回りも違う巨体だったとされています。
そのため、水死体というだけではなく、単純に身体が大きく太った人のことを「土左衛門」と呼ぶこともあったそうです。
水死体の語源とされるぐらいですから、人々に忌み嫌われていたのかというと決してそうではありません。
成瀬川土座衛門の取る相撲はとても豪快であったことから、江戸の人々を魅了し、人気力士として活躍したとされています。
力士の名前以外の語源
続いて、力士の成瀬川土左衛門以外に存在する「土左衛門」の語源について解説していきます。
土仏に似ているため
水死体が「土仏(どぶつ)」に似ていることが語源となった説があります。
「土仏」といえば本来は土で作られた仏像のことを意味します。
しかし、他にも「ぶざまに太った人」や「太った婦人」を意味する言葉なんですね。
ぶよぶよになってしまった水死体を「土仏」のようだと揶揄して、「土左衛門」と呼んだという説です。
これは亡くなった仏様に失礼ですし、あまりにも不謹慎な語源ですよね。
水に落ちるとドボンと音がするため
また、水に落ちると「ドボン!」と音がすることから「土左衛門」になったという説もあります。
水死体は腐敗が進みすぎて元の姿が全くわからなくなり、身元も全然わからなくなってしまいますよね。
そのため、身元のわからない水死体を適当に「左衛門」と名付け「水にドボンと落ちた左衛門」ということで「土左衛門」としたのかもしれません。
しかし、これらの説はほとんど俗説の類であり、やはり有力な語源として語られているのは、力士の「成瀬川土左衛門」だとされています。
以上が「土左衛門という言葉の語源」についてでした。
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まとめ
「土左衛門」の語源となった人物は、江戸時代に実在した「成瀬川土左衛門」という力士である。
水死体が腐敗することによりガスが発生して膨らんでいき、身体が水を吸ってぶよぶよになった様子が土左衛門に似ていると言われたことが語源となった。
しかし、土左衛門の語源は諸説あり、太っている人を意味する「土仏」が語源となったという説もある。
また、単純に水に落ちた時に「ドボン」と音が鳴ることから土左衛門としたという説も存在している。